1 準備の必要性の認識と現状把握
事業承継というと、承継方法や税金に目が行きがちですが、これらはあくまで手段にすぎません。親族承継、従業員承継、M&Aのいずれであっても、引き継ぎたいと思われる会社であることが前提となります。
そのため、まず必要なのは、事業承継の準備の必要性を認識し、会社の現状を把握することです。事業承継は長期間を要する作業であり、先送りされがちですが、早期に着手することが重要です。
現状把握は財務状況に限られません。労働契約、議事録、契約書の有無や整備状況など、法務面の確認も不可欠です。これらが未整備の会社を第三者が引き継ぎたいと思うでしょうか。財務だけでなく、法務の視点からの確認が重要です。
また、経営リスクの把握や、経営の見える化も必要となります。資料が整備され、会社の実態がすぐに把握できる状態であれば、会社の評価は高まります。逆に、資料が不足していれば、疑念を持たれ、事業承継が頓挫することもあります。
2 磨き上げと会社価値への対応
現状把握後は、明らかとなった課題を解決し、会社の経営状況を改善する「磨き上げ」を行います。これは財務改善に限らず、コンプライアンス体制や内部統制の整備も含まれます。
磨き上げの結果、会社価値が高まると、株価上昇による問題が生じる場合があります。親族承継や従業員承継では、株式取得資金や相続人間の公平の問題が顕在化します。これに対しては、退職金の活用、議決権制限株式、経営承継円滑化法に基づく遺留分対策など、法的手続きを踏んだ対応が必要となります。
3 その他の重要な検討事項
事業承継では、後継者教育、ナレッジマネジメント、経営者保証、不動産賃貸借、物的担保など、多くの論点が生じます。これらは事案ごとに異なり、経営者自身では気付きにくい問題が潜んでいることもあります。
4 事業承継における弁護士の役割
事業承継は、会社法、民法(相続法)、労働法、税法など、広範な法分野に関わります。弁護士は、事業承継計画の策定、契約書作成、リスク管理、M&Aや相続対応などを通じて、事業承継を総合的に支援することができます。
事業承継はやるべきことが多く、時間もかかります。日々の業務に追われる経営者が単独で対応することは困難であり、弁護士などの専門家の関与が不可欠かつ有効です。
