事業承継対策の重要性
昨今、しきりに事業承継がいわれています。事業承継とは、会社の事業を後継者や他社へ引き継ぐことをいいます。中小企業庁が公表している資料によれば、2020年以降、経営者年齢の多い層が60~74歳あたりになっており(2023年版中小企業白書)、中小企業の経営者の高齢化が問題となっています。
経営者の中には、日々の業務に忙殺されていたり、最後は廃業すればよいと安易に考え、事業承継を真剣に考えていないケースも見られます。ところが、ある日突然、経営者が倒れた場合、途端に会社は混乱し、事業が継続できなくなってしまいます。特に、経営者しか知らないノウハウが業務の肝となっているケースでは、他の従業員では対応できません。
また、事業を誰かに承継するにしても、資金的な手当てをしておくことが必要となります。親族に承継させるにしても、その後継者に資金が無いと、事業承継がうまくいかなくなることもあり得ます。例えば、後継者に会社の株式を譲渡するとしても、現・元経営者が生前に譲渡するケースと、相続するケースがあります。前者の場合、贈与や低廉な価格で譲渡すると贈与税がかかりますし、相当な価格で譲渡するには、後継者が譲渡代金を準備する必要があります。相続の場合でも、株式が高額となれば、相続税も高額となりますので、その原資が必要となります。従業員に承継させる場合も同様であり、従業員が株式の譲渡代金を支払えるとは限りません。
さらに、簡単に廃業できるかというと、そうとも限りません。債務超過となった場合は、裁判所に破産等の申立てをしなければなりませんし、破産をするにも費用がかかります。仮に、債務超過とならず、破産等の手続きをすることなく廃業することが可能であったとしても、取引先や従業員を保護するための手続きが必要となります。
取引先への支払、金融機関からの借入金の返済、従業員への退職金の支払、設備・機器の処分など、廃業に際しては多くの費用が発生します。これらの費用を支払ってしまうと、経営者の手元にはほとんど資産が残らない可能性もあり、老後の生活資金に困るおそれもあります。
もっとも、事業承継の検討を進めた結果、廃業を選択することが最善となる場合もあります。しかし、いずれの結論に至るにせよ、事業承継の準備を進めておくこと自体が重要です。
後継者や他社に事業を引き継いでもらえれば、原則として負債もそのまま引き継がれ、廃業時に生じる費用のキャッシュアウトを回避できる場合があります。また、株式の譲渡代金を老後資金に充てられることもあります。仮に廃業を選択する場合であっても、資金的な余裕がある段階であれば、必要な費用を賄える可能性があります。
このように説明すると、事業承継は節税対策が重要であると考えるかもしれません。確かに事業承継税制は存在しますが、あくまで「事業を円滑に承継する」という目的が先にあり、節税対策はそのための手段にすぎません。節税を自己目的化することは本末転倒といえます。
どのような方法で、いつ、誰に承継するのか、また、事業承継を進める上での障害は何か、それをどのように解決するのか――考えるべき事項は多岐にわたります。これらを進めるには、資料収集や分析、多数の契約書作成が必要となりますが、経営者自身がこれらを行うことは容易ではありません。法律に関わる事項が多いため、弁護士に依頼することが最適です。
